2025.06.08
リノベーション
既存ビル活用の検討手順
既存ビルの活用は、以下の流れで検討を進めましょう。
【1】現状の確認
Ⅰ 既存資料 Ⅱ 点検修繕記録 Ⅲ 建物の現状 Ⅳ 耐震
【2】活用方法の検討
どう活用できるのか、資金計画と並行して確認
【3】計画を実行
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【1】現状の確認
資料と現状から、まず「遵法性」を確認しましょう。
特に注意することは「建築された年代」と「新築時の資料」です。
新築当時の法令は、現在の法令とは違うことがあります。
よって、新築時に申請した資料の確認が必要となるのです。
現在の法令にも照らし合わせることが必要となる場合もあります。
現状が「適法」か「既存不適格」なのか、または「違法状態」なのかを確認しましょう。
次に「劣化、不具合」状況を確認していく手順となります。
Ⅰ 既存資料
①手元資料
・建築確認申請図書(設計図、構造計算書、エレベーター設備図、他)、完了検査済証
・その他図面(建築工事請負契約書、製本図面、青焼き図面、土地の測量図など)
・固定資産税納税通知書、不動産権利証
②公共情報
・役所の建築記録(建築概要書、台帳記載証明 … 建築確認申請、検査済証の有無を確認)
・法務局の記録(登記情報)「土地面積、土地図面の有無」「建物面積、建物図面」
・現在の都市計画情報
Ⅱ 点検修繕記録
①法定点検記録
・消防点検(消火器、火災報知器、自動火災報知設備、避難経路等)
・昇降設備(エレベーター、エスカレーター)
・受電設備(キュービクル)
・貯水槽、汚水槽、外壁タイル調査ほか
②大規模修繕記録
・防水、塗装、外壁タイル補修、設備器具交換履歴ほか
Ⅲ 建物の現状
①既存資料と現状の照合
・敷地形状、建築面積、各階床面積
・建物の間取り(出入口や窓の位置、壁の位置、設備の位置ほか)
・使用状況(用途)
②点検修繕記録と現状の照合
・点検指摘事項の有無と、是正の確認
・修繕工事履歴、工事報告書の確認
③目視による建物と設備の確認
・経年劣化、施工不良の確認
・耐用年数超えの設備機器や、不調設備の確認
Ⅳ 耐震基準(建築時期から判断できる)
昭和56(1981)年5月以前に、建築確認申請された建築物は、旧耐震基準の建物となる
耐震診断や耐震補強工事を実施する場合、新築時の建築確認申請図書の有無により、作業の難易度がおおきく異なる
①耐震診断の進め方
・新築時の確認申請図書と構造計算書をもとに、Is値(構造耐震指標)を調査
・新築時の確認申請図書と、現状の建物の整合性も確認する(相違する場合は、原因の調査が必要)
・もしこれらの資料が無い場合、現地測量、非破壊検査を行い、新築時に申請された図面と構造計算書を復元させる
診断の結果、Is値が0.6以下の場合は、耐震補強工事が推奨とされる(一部義務の対象も有り)
②耐震補強工事の進め方
・構造計算と現場の納まりを交互に確認して、どのような補強工法が現実的に施工可能なのか検証する
・工事金額を算出して資金計画に反映させて実行可能なのか検証する
なお、耐震診断や耐震補強工事の補助金制度は、多くの自治体で実施されています。
ただし、補助金申請の対象建物になるかの確認や、申請の手続きには時間を要しますので、十分な準備期間を設けるようにしてください。
参考:東京都「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」
耐震化の状況の報告義務と耐震診断が義務化される建築物の条件
・敷地が特定緊急輸送道路に接する建築物
・昭和56年5月以前に新築された建築物(旧耐震基準)
・道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建築物
【2】活用方法の検討
次に、どう活用できるのか、資金計画と並行して確認していきます。
すべての項目が実施可能なのか、優先順位をつけながら予算と照らし合わせ、必要に応じて取捨選択していきます。
既存ビルの活用方法は、個々の事情にあわせて、さまざまな段階が考えられます。
次に、おおよその難易度順に並べてみます。
①修繕、リフォーム
・老朽箇所の修繕、設備機器の更新、配管の更新、間取り変更、仕上げ材の補修交換
②性能の向上
・環境対策(断熱改修、最新設備機器の導入)耐震補強、外観仕上げ材の刷新
③増築、改築、用途変更
・建物の規模や使途を広げて有効活用
いずれを実行に移す際にも「Ⅰ 既存資料」「Ⅱ 点検修繕記録」これらの資料が重要な役割を果たします。
これらがしっかりと存在するか否かで、実現可能なのかという判断や、実行するための予算がおおきく異なります。
なお③において、一定の規模以上でこれらを実行する場合には、諸官庁への届け出が必要となります。
また、用途変更の可否判断に、現状のライフラインが大きなポイントとなることもあります。
そして、資金計画(手元資金・銀行借り入れ・補助金活用)を確認します。
銀行借り入れをする場合には、オーナーの与信審査も必要となります。
また、実行後に見込まれる収入と支出のキャッシュフローも確認するようにして下さい。
【3】計画を実行
これらの条件がすべてが整いましたら、いよいよ計画実行です。
柴総合計画では、「既存ビルの有効活用」について30分無料相談を行っています。
当社では、日ごろからさまざまな不動産オーナーのご相談を承っております。
今回お伝えした「既存ビル活用の検討手順」は、実際には形式的に進められない場合も多くあります。
ビルの現状、予算、関係者各々の想い、これらを調整する手順に、画一的なマニュアルは存在しないのです。
既存ビルを理解して活用方針をご提案するには、その前段階として個人の相続問題や法人の経営方針に至るまで、不動産・建築・税務財務など総合的な視野と判断が求められることになります。
当社では、お客様のご状況を踏まえ総合的な判断をし、未来に向かってより良い不動産の管理体制のご提案や、相続事業承継へのご準備もご提案しております。
ご所有ビルの活用方針でお悩みの場合には、ぜひ当社へご相談ください。